さまざまなタイプの主婦の基礎収入(休業損害・逸失利益)について

主婦が交通事故に遭ったときには、加害者の保険会社に対し「休業損害」や「逸失利益」を請求することができます。
このとき、「基礎収入」をどのように算定するかが問題となります。これらの損害は、事故前の基礎収入を基準として計算されるからです。
以下では、さまざまなタイプの主婦の基礎収入の考え方について、福岡の弁護士が解説します。
1.専業主婦の場合
専業主婦の場合には、実際の収入がないため「賃金センサス」の「全年齢の女性の平均賃金」を基準として計算します。平成28年度の全年齢の女性の平均賃金は年収376万2300円であり、1日にすると1万円程度の計算です。
2.兼業主婦の場合
兼業主婦の場合には、実際にパート収入があるので、これをどのように取扱うかが問題です。
パート収入を基本とすると、多くの場合、専業主婦より金額が小さくなってしまい、不公平です。
そこで、兼業主婦の場合、全年齢の女性の平均賃金と実際の収入を比較して、高い方の金額を基準とします。つまり、パート収入が376万2300円を超える場合にのみ、実収入を基準とするということです。
一般的な兼業主婦のケースでは、パート収入はそう多くはないので、全年齢の女性の平均賃金を基準とすることになるでしょう。
3.主夫の場合
主夫の場合にも、基礎収入をどのように考えるかが問題になります。
主夫は、男性ですから「全年齢の男性の平均賃金」を使って計算するのかとも考えられます。しかし、男女の平均賃金には格差があるので、全年齢の男性の平均賃金を使うと、主夫が主婦より基礎収入が高額になり、不公平です。
平成28年の全年齢の男性の平均賃金は、549万4300円です(参考)。
そこで、主夫の場合であっても、主婦と同様に「全年齢の女性の平均賃金」を使って計算します。男性であっても「女性の平均賃金」で計算しますが、間違いではありません。
4.高齢の主婦の場合
主婦が高齢の場合には、別途検討が必要です。この場合、若い人よりも労働能力が低下している可能性があるためです。
そこで、被害者の主婦が高齢の場合には、年齢別の女性の平均賃金を採用して、若い主婦よりも基礎収入を減額することがあります。
5.補助的な主婦の場合
主婦には、補助的な役割しかしていない方がおられます。たとえば、母親の家事手伝いをしている娘や、娘夫婦と同居して娘の家事を手伝っている母親などです。
このような場合、一般的な主婦よりも労働の程度が小さいので、適宜基礎収入が減額されます。具体的には、裁判所の裁量により、全年齢の女性の平均賃金の〇%減などとされることがあります。
6.1人暮らしの方の場合
1人暮らしの女性の方は、自分で家事労働をしているものですが、このような場合「主婦」として休業損害や逸失利益が認められるのでしょうか?
通常、「労働」は他人のために行うものであり、自分のために行う家事は「労働」とはみなされません。そこで、1人暮らしの女性は「主婦」とはみなされず、休業損害も逸失利益も認められません。
以上のように、主婦が交通事故に遭ったときには、タイプによって正確な賠償金計算が必要です。疑問があるときには、お気軽に福岡の弁護士までご相談下さい。