交通事故における高齢者の逸失利益の計算方法
交通事故に遭った被害者が高齢者の場合、「逸失利益」をどのように計算すべきかが問題になるケースが多いです。高齢者の場合、いつまで就労できるかが明らかになりにくく、若者と比べると労働能力も低いなど、注意を要する点が多いからです。
今回は、逸失利益とはどのような損害であり、高齢者の場合の逸失利益をどうやって計算すべきか解説します。
1.高齢者の就労可能年数について
1-1.逸失利益とは
逸失利益とは、交通事故の被害者に後遺障害が残ったり死亡したりしたときに、失われてしまった将来の収入です。
交通事故で後遺障害が残ると、事故前よりも仕事の効率が落ちるので生涯にわたって得られる収入が減ってしまいます。また、被害者が死亡すると、当然死亡後の収入が0になります。そこで、このように交通事故によって失われた収入を「逸失利益」として加害者に請求できるのです。
1-2.就労可能年数について
通常一般の被害者の場合、逸失利益は就労可能年齢である67歳までの分を計算します。
しかし、高齢者の場合にはすでに67歳を超えているケースもありますし、67歳に近くなっているけれど、67歳を超えて働き続ける蓋然性が高いケースもあるでしょう。
そのようなとき、67歳までに逸失利益を限定すると、現実と異なる結果となり不合理です。
そこで、高齢者の逸失利益を計算するときには、以下の2つを比べて長い方を就労可能年数として計算します。
- 67歳までの年数
- 症状固定時または死亡時の平均余命の2分の1
2.高齢者の基礎収入について
次に、交通事故被害者が高齢者であった場合の基礎収入の問題をみてみましょう。
2-1.就労している高齢者の基礎収入
就労している高齢者の場合には、基本的に実収入を基礎収入として逸失利益を計算します。
2-2.就労していない高齢者の基礎収入
高齢者の場合、現実に働いていない方もおられます。
ただ、交通事故当時たまたま働いていなかったとしても、就労意欲があり、実際に就労する能力と蓋然性があったのであれば、逸失利益が認められる可能性があります。たとえば、現実に就職活動をしていて内定を受けていた場合などです。
また、高齢者でも、主婦などで家族のために家事労働をしているケースがありますが、そういった事例でも逸失利益を請求できます。
ただ、現実に働いていない高齢者の逸失利益を計算するときには「基礎収入」をいくらにすべきかが問題となります。
一般の交通事故被害者の場合には「賃金センサスの平均賃金」を使って計算することが通常ですが、高齢者の場合には、若年者よりも労働能力が落ちると考えられます。
そこで、高齢者の基礎収入を算定するときには、業種別や男女別の平均賃金を割合的に減額して適用したり(20%減や30%減などにします)、年齢別の平均賃金を使ったりして、適宜減額されるケースが多くなります。
3.年金生活者の場合
高齢者の場合、年金収入によって生活をされている方も多いですが、年金生活者の場合、逸失利益が認められるケースとそうでないケースがあります。
まず、後遺障害逸失利益は認められません。後遺障害が残っても年金が減額されることはなく損害が発生しないためです。
これに対し、死亡逸失利益は認められる可能性があります。年金の中でも、老齢年金や障害年金、退職年金などは逸失利益性が認められているからです。これに対し,遺族年金は逸失利益として認められていません。
交通事故損害の中でも「逸失利益」は高額になるケースが多いです。高齢者が交通事故に遭われたときには正しい知識を持って適切に逸失利益を計算する必要があるので、福岡で交通事故に遭い、対応に迷われたときにはお気軽に弁護士までご相談下さい。
上にスクロール