交通事故で幼児が被害者に!女児か男児かで、逸失利益が異なる?
交通事故に遭うのは大人ばかりではありません。幼児や小学生などの子どもも事故の被害者になる可能性があります。
子どもが交通事故被害に遭ったとき、被害者が男の子か女の子かで「逸失利益」という損害の計算方法が異なってきます。
今回は、交通事故における男児と女児の逸失利益について、解説します。
1.逸失利益とは
交通事故では「逸失利益」という損害が発生するケースが多いです。
逸失利益とは、交通事故によって得られなくなってしまった将来の収入のことです。
交通事故で後遺障害が残ると、労働能力が低下して、それまでのようには効率的に働けなくなります。そこで、後遺障害の程度(等級)に応じて「労働能力喪失率」が定められており、その割合に応じた逸失利益を請求できます。
また、交通事故で被害者が死亡すると、死亡後には一切の収入を得られなくなります。そこで、「死亡逸失利益」という逸失利益が発生します。
死亡逸失利益の場合、労働能力の喪失率は常に100%となりますが、死亡すると生活費がかからなくなるので「生活費控除率」という割合を使って数値を調整します。
逸失利益を計算するとき、基本となるのは「基礎収入」です。
基礎収入とは、逸失利益の計算となる年収のことであり、一般的には被害者の事故前の年収を標準とします。
当然、基礎収入の高い人の方が逸失利益も高額になります。
2.子どもの基礎収入について
子どもの場合、実際に働いてはいませんが、将来働いて収入を得る蓋然性が高いと考えられるので、後遺障害でも死亡でも逸失利益が認められています。
ただ、基礎収入をいくらにすべきかが問題となります。
子どものように、実際の収入がない被害者の逸失利益を算定するときには、一般的に「賃金センサスの平均賃金」を使います。
賃金センサスとは、政府がとっている国民の賃金の統計資料で、業種別、男女別、年齢別、学歴別などに細かく分類されて平均賃金が明らかにされています。
被害者が子どもや就労前の学生などの場合、原則的には「男女別」「学歴計・全年齢」の平均賃金を使います。
そこで、被害者が男児の場合には「男性の平均賃金」、被害者が女性の場合には「女性の平均賃金」を適用することになります。
ところが、そうなると、男児と女児の場合とで逸失利益に差が出てしまいます。
女性の社会進出が進んでいるとは言っても、現時点においては男性の平均賃金が女性の平均賃金が大幅に高額になっているからです。
平成29年の男性の平均賃金は551万 7400円であるのに対し、女性の平均賃金は377万 8200円となっています。
これを基礎として計算するので、単純計算で男児の場合、逸失利益が女児の1.4倍以上になってしまいます。
3.女児の基礎収入の算定方法
同じように子どもが死亡したり後遺障害が残ったりしたにもかかわらず、男児か女児かというだけで賠償金の金額に大きな違いが発生するのは不合理かつ不公平です。
そこで、最近の裁判例では、女児が被害者となっている場合の基礎収入として「男女の平均賃金」を採用する例が増えています。
平成29年度の男女の平均賃金は、491万 1500円であり、こちらを採用すると、男児と女児の差がかなり埋まり、男児の逸失利益が女児のおよそ1.1倍程度となります。
また、女性の場合、死亡逸失利益の生活費控除率が低いので、死亡事故のケースでは男児よりもむしろ高額になる可能性もあります。
以上のように、子どもが交通事故の被害者となった場合には逸失利益の計算にも注意が必要です。交通事故に遭って対応に困られている場合には、お気軽に福岡の弁護士までご相談下さい。
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