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交通事故における後遺障害認定の重要性と注意点について弁護士が詳説

交通事故における後遺障害認定の重要性と注意点について弁護士が詳説

後遺障害の説明と主な種類

後遺障害とは、交通事故による怪我や疾病が治療によって症状が固定した後も残る障害のことを指します。ここでいう「症状固定」とは、治療による症状の改善が見込めなくなり、症状が一進一退の状態(症状が固定している状態)を意味します。

後遺障害には様々な種類があり、主に以下のようなものが含まれます。

・ 身体的障害:四肢の機能障害、視覚・聴覚障害、内臓機能の障害など
・ 精神的障害:高次脳機能障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など
・ 外貌上の障害:顔面の醜状痕、線状痕、瘢痕など

これらの障害は、被害者の日常生活や就労能力に大きな影響を与える可能性があります。

後遺障害が認定されるとどうなるのか

賠償金額の決定

後遺障害の等級によって、受け取れる賠償金額が大きく変わります。例えば、最も重度の後遺障害とされる1級と最も軽度の後遺障害とされる14級では、賠償金額に数千万円の差が生じる可能性があります。

  • 慰謝料: 後遺障害の等級に応じた慰謝料が設定されており、等級が高いほど支払われる金額が増加します。1級の後遺障害では数千万円の慰謝料が支払われることがありますが、14級では数十万円から百万円程度となります。
  • 逸失利益: 後遺障害によって将来的に得られるはずだった収入が失われる場合、その損失分を賠償金として請求できます。等級が高いほど、労働能力の喪失割合が大きくなり、逸失利益も増加します。
  • 介護費用: 重度の後遺障害の場合、継続的な介護が必要となり、その費用も賠償金に含まれます。1級や2級の後遺障害では、24時間の介護が必要となる場合が多く、その費用は高額になります。

将来の生活設計

重度の後遺障害が認定された場合、今後の就労可能性が見込めなくなったり、介護の必要性が生じてくる可能性があります。

  • 重度の後遺障害が認定されると、従前の職務を継続できるか、新たな職種に転換する必要があるかが問題となります。職業リハビリテーションや再就職支援が必要となる場合、関連する費用や損失が賠償額に反映されることがあります。
  • 日常生活での介護が必要な場合、家族の支援だけでなく、介護サービスの利用をすることが考えられます。介護計画を立て、適切なサービスを選択するためには、後遺障害の具体的な評価が不可欠です。これにより、介護費用が賠償額に含まれ、大幅な増額が見込まれます。
  • バリアフリー改修や福祉機器の導入など、住環境の整備が必要となる場合、その費用も賠償金に加算されます。例えば、自宅の段差解消、手すりの設置、介護用ベッドの購入など、生活の質を維持するための設備が必要となる場合、これらの費用が増額要因となります。認定された後遺障害が将来の生活設計に大きく影響するため、それに伴う経済的損失や必要な費用を適切に見積もることが、賠償金の増額につながります。

各種制度の利用

障害等級に応じて、障害年金や各種福祉サービスなどの社会保障制度を利用できる可能性があります。

  • 障害年金: 国の障害年金制度では、障害の等級に応じて年金が支給されます。これにより、収入が減少した場合でも生活の安定を図ることができます。
  • 福祉サービス: 地域で提供される福祉サービスや支援を受けることができる場合があります。これには、ヘルパー派遣、デイサービス、介護用品の貸与などが含まれます。
  • 公共交通機関の利用支援: 障害者手帳の取得により、公共交通機関の運賃割引などの特典を受けることができます。また、特定の医療費助成や税制優遇措置なども受けられる場合があります。

適切な後遺障害認定を受けることは、被害者の権利を守り、今後の生活を支える上で極めて重要です。後遺障害の認定は賠償金額の決定に直接影響し、将来の生活設計や各種制度の利用においても大きな役割を果たします。専門家のサポートを受けながら、しっかりとした認定を目指すことが、被害者にとって最善の結果をもたらすでしょう。

後遺障害の等級と概要

後遺障害は、その程度によって重度の後遺障害とされる1級から軽度の後遺障害とされる14級までの等級に分類されます。

これらの等級は、自賠責保険や任意保険の支払基準となるだけでなく、裁判における賠償額算定の基準としても用いられます。

介護を要する場合の後遺障害等級表【別表第1】

等級後遺障害
第1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

介護を要しない場合の後遺障害等級表【別表第2】

等級 後遺障害
第1級両眼が失明したもの
咀嚼及び言語の機能を廃したもの
両上肢をひじ関節以上で失つたもの
両上肢の用を全廃したもの
両下肢をひざ関節以上で失つたもの
両下肢の用を全廃したもの
第2級一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
両上肢を手関節以上で失つたもの
両下肢を足関節以上で失つたもの
第3級一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
咀嚼又は言語の機能を廃したもの
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
両手の手指の全部を失つたもの
第4級両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
両耳の聴力を全く失つたもの
一上肢をひじ関節以上で失つたもの
一下肢をひざ関節以上で失つたもの
両手の手指の全部の用を廃したもの
両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
一上肢を手関節以上で失つたもの
一下肢を足関節以上で失つたもの
一上肢の用を全廃したもの
一下肢の用を全廃したもの
両足の足指の全部を失つたもの
第6級両眼の視力が〇・一以下になつたもの
咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
第7級一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
一足をリスフラン関節以上で失つたもの
一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
両足の足指の全部の用を廃したもの
外貌に著しい醜状を残すもの
両側の睾丸を失つたもの
第8級一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
脊柱に運動障害を残すもの
一手のおや指を含み二の手指を失つたもの
又はおや指以外の三の手指を失つたもの
一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
一上肢に偽関節を残すもの
一下肢に偽関節を残すもの
一足の足指の全部を失つたもの
第9級両眼の視力が〇・六以下になつたもの
一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
一耳の聴力を全く失つたもの
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
一足の足指の全部の用を廃したもの
外貌に相当程度の醜状を残すもの
生殖器に著しい障害を残すもの
第10級一眼の視力が〇・一以下になつたもの
正面を見た場合に複視の症状を残すもの
咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
脊柱に変形を残すもの
一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
長管骨に変形を残すもの一手のこ指を失つたもの
一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
局部に頑固な神経症状を残すもの
外貌に醜状を残すもの
第13級一眼の視力が〇・六以下になつたもの
正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
一手のこ指の用を廃したもの
一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの
又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
局部に神経症状を残すもの

交通事故の後遺障害

後遺障害が認定されるまでの流れ

後遺障害が認定されるまで、一般的には以下のような流れで進みます。

  1. 治療継続
    まずは十分な治療を受け、症状が安定するまで医療機関(病院)に通院します。
  2. 症状固定の診断まで
    病院の担当医が症状固定と判断したら、保険会社から受け取った「後遺障害診断書」を病院に渡します。
  3. 後遺障害診断書の作成
    病院から「後遺障害診断書」を作成してもらいます。後遺障害診断書は、後遺障害認定の必要資料となります。
  4. 自賠責保険への後遺障害申請
    後遺障害診断書を含む必要書類を自賠責保険に提出し、後遺障害認定を申請します。
  5. 認定結果の通知
    自賠責保険会社が後遺障害に該当するか審査し、後遺障害に該当する場合は等級認定結果を通知します。
  6. 認定結果に納得できない場合
    認定結果に納得できない場合は、異議申し立てを行うことができます。

上記の説明は、一般的な流れであり、実際には個々の事案によって多少の違いが生じることがあります。

後遺障害の申請を行う際の注意点

後遺障害認定を受ける際には、以下のような点に注意が必要です。

  1. 症状固定の時期
    症状固定と診断される時期が早すぎると、十分な治療に至っていないとして後遺障害が非該当と判断される可能性があります。
  2. 後遺障害診断書の記載内容
    後遺障害診断書の記載内容は非常に重要です。実際に症状が残存していても、後遺障害診断書に症状の記載がなければ、後遺障害として残存していないと判断され、そもそも審査対象から外されることがありますので、適切に症状を後遺障害診断書に反映していただき、具体的かつ詳細に記載してもらうことが大切です。
  3. 複数の後遺障害がある場合
    1つの事故で複数の後遺障害が残った場合、それぞれを個別に評価するのではなく、総合的に評価されます。例えば、傷跡による醜状障害や耳鳴り・難聴などの障害、むち打ち症状による障害など複数の症状が残存している場合は、それぞれの診療科で後遺障害診断書を作成していただくことで、複数の後遺障害が認定される可能性があります。

後遺障害の手続きを弁護士に依頼するメリット

後遺障害は複雑で専門的な知識を要します。弁護士に依頼することで、後遺障害として評価される可能性が高くなります。

  1. 後遺障害について専門的な知識と経験がある
    弁護士は、後遺障害認定に関する法律や判例、認定基準について専門的な知識を持っています。
  2. 適切な情報収集
    後遺障害の程度を適切に立証するために必要な情報や検査の提案など助言します。
  3. 自賠責保険への訴求
    後遺障害の申請において、被害者の症状がどの後遺障害に該当するのか整理したうえで申請することで、スムーズな後遺障害の審査が行われます。
  4. 総合的な解決(示談交渉)
    後遺障害の認定だけでなく、示談交渉を含めて適切な内容での解決を目指すことができます。

また、これらのお手続きについては、弁護士費用特約に加入している場合は、実質的なご負担はなくご依頼いただけます。

弁護士費用特約とは

まとめ

交通事故における後遺障害認定は、被害者の今後の人生に大きな影響を与える重要な手続きです。適切な認定を受けることで、必要な賠償を得られるだけでなく、将来の生活設計にも役立ちます。

しかし、後遺障害認定のプロセスは複雑で、様々な注意点があります。症状固定の時期の見極め診断書の記載内容複数の後遺障害の評価保険会社との交渉など、多くの要素に注意を払う必要があります。

このような複雑な手続きを適切に進めるためには、専門家のサポートが不可欠です。弁護士に相談することで、被害者の権利を守り、適正な後遺障害認定と賠償を受けられる可能性が高まります。

交通事故に遭われた方、後遺障害でお悩みの方は、一人で抱え込まず、早めに弁護士にご相談ください。私たち弁護士は、皆様の権利を守り、適正な賠償を受けられるよう、全力でサポートいたします。適切な後遺障害認定を受け、必要な賠償を得ることで、今後の生活再建への第一歩を踏み出しましょう。

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