1.遅延損害金とは
遅延損害金とは、「支払いが遅れたことにより、債権者に発生した損害を賠償するためのお金」です。 本当は期日までに支払わなければならなかったのに、払われなかったら、債権者はそのお金の運用利益を失うことになります。そこで債務者は、遅れた日数分の遅延損害金を支払わなければなりません。 交通事故の場合、被害者は加害者に対して「損害賠償請求権」を持っています。そして債権者は、交通事故が起こったらすぐに損害賠償をしなければならない義務を負っています。 そこで、交通事故後の日数が経過すればするほど、遅延損害金の金額がどんどん膨らんでいき、支払いを受けるときに遅延損害金を足してもらうことができます。2.遅延損害金の計算方法
遅延損害金は、どのくらいの金額になるのでしょうか?2-1.遅延損害金の「年率」
遅延損害金には定型的な計算方法があります。 法律は、金銭債務の遅延損害金について、債権者に個別に発生した損害額を計算するのではなく「年率」で計算するよう定めています。 具体的には、未払金の金額に対して年5%の割合で遅延損害金が加算されます。2-2.遅延損害金は、いつから起算するのか
年率5%だとしても、その金額を「いつから」計算するのかが問題です。 一般的に、遅延損害金が発生するのは、支払い遅滞に陥ったときです。 交通事故の損害賠償債務の支払いが遅滞に陥るのは、いつなのでしょうか? 交通事故の場合には「事故と同時」に支払い遅延になると理解されています。 つまり加害者は、交通事故が起こったと同時に全額の賠償金を支払わねばならないということです。 このようなことを聞くと「後遺障害が残った事例では、症状固定日から計算すべきではないか?」と疑問を持たれるかもしれません。症状固定日にならないと、損害内容が確定しないからです。 確かに時効の計算ではそのような考え方がとられていますが、遅延損害金の場合にはそうではなく、裁判所は「交通事故が発生した当日」から遅延損害金を計算すると考えています(最高裁平成7年7月14日)。 一般的に、期間を計算するときには「初日不算入の原則」と言って、初日を含まないものですが、不法行為にもとづく損害賠償義務の場合、初日も入れて遅延損害金が計算されます。2-3.遅延損害金計算の具体例
交通事故で遅延損害金計算をするときの具体例を示します。
CASE
交通事故が平成29年7月1日に発生し、症状固定日が平成30年2月1日、被害者に後遺障害が残り、3000万円の賠償義務が発生。
事故発生日から賠償金の受取日までの日数は365日の事案。
この場合、3000万円÷365×0.05×365=150万円の遅延損害金を請求できます。
被害者は、元本と遅延損害金の合計である3150万円の支払いを受け取れます。