慰謝料について

知らないと損!交通事故の慰謝料の種類と請求の流れ
交通事故における慰謝料とは、事故によって受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金のことを指します。
ここでは、交通事故の慰謝料に関する基本知識や、慰謝料の支払い基準などについて詳しく解説します。
はじめに:交通事故の慰謝料とは?
交通事故で支払われる慰謝料には、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つの種類があります。
各慰謝料の支払基準も、さらに3種類存在しますが、そちらは次の項目で解説します。
⑴傷害慰謝料
事故による通院・入院に対する精神的苦痛への賠償で、通院日数や治療期間に応じて金額が決まります。
⑵後遺障害慰謝料
交通事故で治療を続けても完全には回復せず、体や精神に障害が残った場合、その後遺障害に対する精神的損害を補償するお金のことです。自賠責保険から「後遺障害等級認定」を受けることで請求が可能となります。
認定された等級に応じて、金額が大きく変わりますので、次の慰謝料の基準についての項目で詳しく解説します。
⑶死亡慰謝料
交通事故で被害者が亡くなった場合、その精神的苦痛に対して支払われるのが「死亡慰謝料」です。
慰謝料の請求者は、原則として遺族(法定相続人)が行い、死亡慰謝料には次の2種類があります。
① 被害者本人の慰謝料 | 相続人が請求 | 亡くなった本人が事故で受けた精神的苦痛に対する慰謝料 |
② 遺族固有の慰謝料 | 配偶者・子・親など | 身近な家族が失われたことによる遺族自身の精神的苦痛に対する慰謝料 |
死亡慰謝料の金額は、被害者の立場や扶養状況・家族構成により目安が異なります。
下記は「赤い本」に基づく弁護士基準の相場です。
被害者の立場 | 慰謝料額(目安) |
---|---|
単身者(独身、扶養者なし) | 2,000万円前後 |
扶養家族あり(配偶者や子あり) | 2,500万円前後 |
被害者+遺族への慰謝料を合わせて請求する場合 | 2,800万円前後(相場の上限) |
なお、自賠責基準では、被害者本人の慰謝料は一律400万円、遺族は1人の場合550万、2人の場合650万、3人以上で750万と、最低限の補償がされます。
もし、被害者に被扶養者がいる場合は、これにさらに200万円が加算されます。
交通事故の慰謝料には3つの基準があるって本当?
交通事故の慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準という3つの基準があります。
基準名 | 特徴 | 慰謝料の金額 |
---|---|---|
自賠責基準 | 最低限の補償 | 最も低い(傷害:4,300円/日) |
任意保険基準 | 保険会社の内部基準 | 自賠責より高めだが裁判基準より低い |
裁判基準(弁護士基準) | 裁判例に基づいた基準 | 最も高額。弁護士が請求可能 |
ここでは、各基準の違いと具体的な内容について詳しく解説します。
⑴自賠責基準
自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法(自賠責法)に基づいて定められた、交通事故における被害者への最低限の補償を規定する基準です。
自動車の保有者は、自賠責保険への加入が義務付けられており、交通事故が起きた場合には、この基準に従って被害者への慰謝料等が支払われます。
自賠責基準での傷害慰謝料は、日額4300円(2020年4月以降の事故に適用)と定められています。
自賠責基準の保険金額は、あくまで最低限の補償であり、実際の精神的苦痛を十分に補償するには不十分な場合が多いです。
⑵任意保険基準
任意保険基準とは、自賠責保険の補償範囲を超える損害に対して、加害者や被害者が個別に加入している任意の自動車保険に基づいて支払われる慰謝料の基準です。
任意保険会社ごとに慰謝料の計算方法や支払額に違いがありますが、一般的に自賠責基準よりも高めな慰謝料が支払われることが多いです。
任意保険基準での慰謝料は、具体的な苦痛の内容や影響の大きさ、治療期間など、より詳細な事情を考慮して算定されます。
⑶裁判基準(弁護士基準)
裁判基準とは、実際に裁判が行われた場合に、裁判所が判断する慰謝料の基準のことで、弁護士基準とも呼ばれます。
この基準は、具体的なケースの事情や、過去の類似事例の裁判例を参考にして決定され、裁判基準での慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準と比較して高額になり、適正な賠償を受け取ることができます。
具体的には、「日数や期間」に応じて金額を決定しており、「入通院慰謝料表」(「赤い本」基準)に基づいて算定しています。
なお、症状が軽度で、通院期間に対して実通院日数が少ない場合などは、実通院日数を3倍した日数=通院期間相当数として計算することもあります。
傷害慰謝料
(慰謝料の例)
区分 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
計算式 | 1日あたり4,300円(固定) | 日数や期間に応じた相場表 |
慰謝料例(3か月通院) | 約38万円 | 約53万円 |
特徴 | 最低限の補償 | 裁判所で認められる正当額 |
弁護士にご依頼いただくと、自動的に裁判基準(弁護士基準)での賠償交渉を行います。
また、過失割合に争いがある場合なども、過去の裁判例や判例集(「別冊判例タイムズ」など)をもとに、適切な過失割合を法的に主張することができます。過失割合が1割違うだけで、支払われる賠償金額が大きく変わることがありますので、専門家へのご相談をおすすめします。
特に、後遺障害が認定された事案では、自賠責基準と裁判基準(弁護士基準)で等級に応じてかなり金額の開きがあります。
以下の一覧表から、等級別の慰謝料をご確認いただけます。
後遺傷害慰謝料
後遺障害等級別 慰謝料相場一覧(自賠責基準・弁護士基準の比較)
等級 | 自賠責基準(万円) | 弁護士基準(万円) |
---|---|---|
1級 | 1650 | 2800 |
2級 | 1203 | 2370 |
3級 | 861 | 1990 |
4級 | 737 | 1670 |
5級 | 618 | 1400 |
6級 | 512 | 1180 |
7級 | 419 | 1000 |
8級 | 324 | 830 |
9級 | 245 | 690 |
10級 | 187 | 550 |
11級 | 135 | 420 |
12級 | 94 | 290 |
13級 | 57 | 180 |
14級 | 75 | 110 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故により被害者が亡くなった場合に、加害者(または加害者側の保険会社)に対して請求できる損害賠償のひとつです。これは亡くなられたご本人が本来受けるべき精神的苦痛への賠償であると同時に、その死により深い悲しみを受けたご遺族に対する精神的苦痛の賠償の意味も含みます。
死亡慰謝料の相場と判断基準
裁判所の実務においては、以下のような基準が存在します(いわゆる「赤い本」基準)。
被害者の立場 | 慰謝料の目安(裁判基準) |
---|---|
一家の支柱 | 約2,800万円 |
母親・配偶者 | 約2,500万円 |
子ども・高齢者など | 約2,000〜2,400万円 |
これに加えて、事故の悪質性、遺族の数や年齢、被害者の年収・将来性などによって慰謝料額は増減します。保険会社は任意基準に基づき、これより低い金額を提示してくることが一般的ですので、注意が必要です。
慰謝料の請求時に注意するべきポイントとは
慰謝料を請求する際には、以下の点に注意する必要があります。
⑴通院状況は慰謝料額に大きく影響する
通院期間や通院頻度は、傷害慰謝料の金額に直接影響します。
自賠責基準における実際の支払額は、「治療期間」と「実際に治療を受けた日数(通院日数)」の少ない方の2倍を掛けた日数に基づいて計算されます。
(例)治療期間30日、通院日数12日 → 12日×2=24日 → 24日×4,300円=10万3200円
適正な賠償を受け取るため、またご自身の心身の回復のためにも、医師の指示に従って、しっかり治療を受けましょう。
⑵保険会社の提示額は「裁判基準」より低いことが多い
任意保険会社から提示される慰謝料額は、通常「自社基準」や「任意保険基準」に基づいており、裁判基準(弁護士基準)より低額なことがほとんどです。
「提示された金額=正当な金額」とは限らないため、適正な賠償額が知りたい場合には、お気軽に当事務所までご相談ください。
⑶後遺障害の等級認定は慎重に行う
交通事故の影響で、後遺障害が残存した場合には、後遺障害慰謝料を請求することができますが、請求には、「後遺障害等級認定」が必要です。
後遺障害は、ただ書類を提出するだけで認められるものではなく、専門的な主張や立証が必須となりますので、治療中や事故直後などの早い段階でも弁護士へご相談されることをお勧めします。
⑷時効に注意(原則3年)
慰謝料を含む損害賠償請求権には、時効があります。
交通事故の場合、事故発生日または損害と加害者を知った日から3年が原則(死亡・重度後遺障害の場合など例外あり)となっており、時効を過ぎると、請求が認められません。
まとめ:適正な賠償の獲得には弁護士への相談が鍵
慰謝料を請求する際には、上記のような3つの基準を理解し、自身の状況に最も適した基準を選択することが重要です。
特に、任意保険に加入している場合や、自賠責保険の補償だけでは不十分と感じる場合は、裁判基準(弁護士基準)による請求を選択することで、より適正な賠償を受け取ることができるようになります。
当事務所では、法律の専門家である弁護士が、事故直後から治療中、後遺障害の申請時や保険会社から賠償額の提示があった場合など、あらゆるケースでのご相談に対応しております。
特に、事故直後は治療や手続きに追われ、精神的にも疲弊しやすい時期です。弁護士に依頼することで、煩雑な交渉や手続きを一任でき、治療に集中することができます。
当事務所の相談料は無料で、LINEからも簡単にご相談いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
交通事故による骨折の慰謝料についての解説

交通事故による骨折の慰謝料は、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に記載されている慰謝料算定表(別表Ⅰ)で確認できます。
交通事故による骨折の種類
交通事故によって身体に強い衝撃が加わると、骨折に至るケースがあります。交通事故による骨折の部位は、交通事故の状況によって様々ですが、代表的なものとして、手足の骨折、肋骨の骨折などが挙げられます。
骨折の種類 | 骨折の種類と症状 |
---|---|
単純骨折 | 折れた骨が皮膚に露出していない骨折 |
粉砕骨折 | 骨が粉々に砕けた骨折 |
圧迫骨折 | 骨が潰れたように変形した骨折 |
剥離骨折 | 交通事故等の外部衝撃により、靭帯や腱の結合部分から骨が剥がれた骨折 |
解放性骨折 | 骨が折れると同時に同部位の皮膚が損傷し皮膚から骨が露出した骨折 |
例えば、同じ上腕骨骨折でも、骨折の種類によっては完治までの期間が変わってくることがあります。
また、骨折により神経が圧迫されるケースも併発すると、痺れや麻痺、感覚鈍麻、疼痛などの症状が出ることがあります。さらに、骨折部位の腫れや内出血によって、血行障害を引き起こすこともあります。
このように、骨折は、単に骨が折れるだけでなく、神経などの周辺組織にも影響を及ぼす可能性があるものです。
さらに、骨折した部位や症状によって、日常生活に大きな支障をきたすことも多くあります。
手足の骨折では、歩行や食事、着替えなどの基本的な動作が困難になります。また、仕事の内容によっては、完全に骨癒合するまで休業せざるを得なくなることや、被害者の年齢によっては介護が必要になったりすることもあります。
このように、交通事故による骨折は、身体的にも精神的にも大きな負担を強いられるものです。適切な治療を受けるとともに、十分な補償を得ることが重要です。
交通事故の骨折において、よくある慰謝料の問題
慰謝料とは、交通事故によって被った苦痛を、金銭的に評価し補償するものです。
骨折を伴う場合、弁護士に依頼することで、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に記載されている慰謝料算定表(別表Ⅰ)により、慰謝料を算定することが可能です。
骨折により入院して、退院後は外来通院に切り替えて治療を継続することがありますが、通院期間に対して、通院日数が極端に少ない場合、慰謝料の金額について見解が分かれる問題が起こりえます。
骨折の場合、最終的な示談の際に保険会社から通院日数が少ないと判断されてしまう傾向があります。
これは、骨折した直後は通院日数が多くても、治療が終了に近づくにつれ、徐々に通院日数が少なくなっていくことが多いためと考えられます。
また、主治医は定期的なリハビリのために通院が必要であると診断しているにも関わらず、通院の頻度を自己判断で減らしたり、リハビリを怠ったりすると、通院日数が少ないと判断される可能性があります。
このように、通院日数の不足は、最終的に獲得できる慰謝料の減少につながるケースがあります。
骨折部位の痛み等が少なくなってきたとしても、自己判断で通院を止めてしまうことは避けた方が良と考えられます。
また、症状固定時に関節の可動域制限、疼痛や痺れ、感覚鈍麻などの神経症状が残存した場合、後遺障害が認められる可能性があります。
交通事故により骨折をした場合、治療期間中に弁護士に相談することで、症状固定時期の相談を承っております。
また、医療機関への症状の伝え方、お伝えするポイントのアドバイスなども行っておりますので、ぜひ当事務所にご相談ください。
骨折の慰謝料を決める要因
骨折の慰謝料を適切に請求するためには、以下のようなことが大切です。
- 証拠の収集
慰謝料を請求する際は、骨折の事実を証明する証拠が必要です。医師の診断書、レントゲンやCTなどの検査結果、診療明細書などを整理しておきましょう。また、事故状況を証明する証拠として、事故現場の写真、目撃者の証言なども重要です。
これらの証拠が不十分だと、十分な慰謝料を得ることが難しくケースも考えられます。
- 示談交渉の際の注意点
保険会社との交渉の際は、弁護士に依頼することで慰謝料が裁判基準で請求することが可能となります。また、後遺障害が残る可能性がある場合は、示談を急がず、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。
また、示談書にサインする前に、弁護士に内容を確認してもらうことも大切です。不利な内容が含まれていないか、適切な金額になっているかなどを確認してもらいましょう。
- 弁護士に相談する
骨折の慰謝料を適切に請求するためには、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、事故の状況や骨折の程度などを踏まえて、適切な慰謝料の金額を算定し、示談交渉を行ってくれます。また、訴訟になった場合の対応も行ってくれるため、安心して任せることができます。
弁護士に相談することで、自分では気づかなかった問題点や、請求できる項目なども見つかることがあります。また、保険会社との交渉も、弁護士に任せることで、適切な金額を得られる可能性が高くなります。
弁護士選びのポイント
交通事故に遭って弁護士への依頼を行う場合、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 交通事故の経験が豊富な弁護士を選ぶ
交通事故の慰謝料請求には、独特の知識や経験が必要です。そのため、交通事故の経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。弁護士の経歴や実績を確認し、交通事故の専門家であることを確認しましょう。 - 無料相談を利用する
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で行っています。複数の弁護士に無料相談を申し込み、実際に相談にのってもらうことをおすすめします。相談の中で、弁護士の対応や事務所の指針を確かめることができます。 - 費用の説明を確認する
弁護士に依頼する際は、費用の説明を確認することが大切です。着手金や成功報酬の金額、支払い方法などを確認し、納得できる内容かどうかを見極めましょう。
交通事故による骨折の慰謝料について解説まとめ
交通事故による骨折は、身体的にも精神的にも大きな負担を強いられます。
適切な慰謝料を請求することで、その負担を少しでも軽減することができます。
慰謝料の金額は、骨折有無、治療期間、治療日数、後遺障害の有無などによって異なりますが、弁護士に相談することで、適切な金額を請求することができます。
交通事故で骨折してしまった場合は、一人で悩まず、まずは弁護士に相談しましょう。
当事務所では、事故直後の対応から示談交渉までサポートしておりますのでお気軽にお問合せください。