事業所得者の逸失利益について具体的に教えて下さい。

- 逸失利益とは、後遺障害が認定された場合の将来の労働能力の喪失分(減収分)の賠償です。
- 逸失利益は以下のように計算をします。
- (計算式)
- 逸失利益=基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間ー中間利息
それでは、事業所得者(個人事業主)の方の逸失利益はどのように計算するのでしょうか。
事業所得者とは、個人事業主の方や農業・漁業に従事されている方を言います。 では、まず、基礎収入からについてお答えします。
事業所得者の基礎収入=(事故前年の売上ー必要経費)×寄与分(率)
事故前年の確定申告書の申告所得額から必要経費を控除した所得金額を基準として計算します。
家族で事業を経営している場合は、被害者の寄与度を定めることにより算出します。 寄与度は、事業の種類・形態・規模・被害者の職務内容・家族・従業員の関与程度から個別に判断することもあります。
また、年ごとに基礎年収の変動が大きな場合は、事故前数年間の平均値を基礎年収とする方法があります。
このように、個人事業主の場合、原則として確定申告の所得金額をベースに計算することになります。
しかし、確定申告で所得金額を低めに申告しているケースも多く、この場合は逸失利益の算定について争点となることがあります。
当事務所の事例では、大きな規模の農家をしていた個人事業主の方について、確定申告上の所得は約30万円程度でしたが、
その地域の農家の平均所得などから現実の所得を立証したというケースもあります。
また、確定申告では申告していない所得があった場合でも、別の収入を通帳の入金履歴などから立証したというケースもあります。
このように、確定申告の所得を低く申告している場合でも、諦めずに立証を積み重ねていくことで、現実に即した基礎収入が認められることもあります。
労働能力喪失期間は、給与所得者と同じ計算によります。労働能力期間は原則は症状固定から67歳までの期間で計算を行いますが、具体的な後遺障害の内容や程度によってはそれよりも短い期間で算定されることもあります。
もっとも、67歳までの期間が短い場合や、既に67歳を超えている場合でも、被害者が健康状態に全く問題がなく、なくなる直前まで就労する可能性が高いと認められる場合は、平均余命に近い年齢までの労働能力を認められるケースも有ります。
高齢者の方ついては高齢者の逸失利益の算定方法をご参照ください。
また、後遺障害の内容によっては保険会社が逸失利益を否定してくるケースも多くあります。詳しくは、逸失利益が否定されやすい後遺障害とはをご参照ください。